調律で終わらない調律師みきあつしのピアノ工房

日々のこと

調律を学ぶということ

先日、同業の調律師の友人とこんな話題になりました。

「自分で調律ができるようになりたいから、自宅のピアノで教えてほしい。」

長年この仕事をしていると、このようなご相談をいただくこともあります。
ただ正直なところ、「調律という仕事が少し軽く見られているのかな」と感じてしまうこともあります。

調律師になるためには、大きく分けて2つの道があります。
調律専門学校、もしくはメーカーの養成所に1年以上通うことです。

多くの場合、1人に1台のピアノが与えられ、
調律が1台できるようになるまでのステップを一つひとつ積み重ねていきます。
毎日、朝から晩まで鍵盤を押して、弦を巻きつけているチューニングピンを回し続け、ピアノの唸りを聴き分ける訓練です。

休みの日を除けば、ほぼ毎日の積み重ね。
その訓練を乗り越えて、ようやく「1台調律できる状態」で卒業を迎えます。

しかし、ここからが現実です。
卒業後に楽器店や工房に就職しても、すぐに即戦力になれるわけではありません。

先輩方の調律と比べると、自分の調律は狂いやすいことに気づき、そこから「いかに狂いにくい調律をするか」を追求して、日々学び続けていくことになります。

話を戻しますが、
「自宅で調律ができるようになりたい」と考える方の中には、

できれば多くの時間や費用をかけずに、短期間で身につけたいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、そうした方法で調律を習得し、仕事として成り立たせている例を、私はこれまでに聞いたことがありません。
それが一つの答えなのではないかと思います。

私は調律師として22年、自分の時間を削りながらピアノと向き合ってきました。
それでも今もなお、毎日が勉強です。
この仕事は、一生かけても極めきれないものだと思っています。

「自分で調律ができるようになりたい」
その気持ち自体はとてもよく分かります。

だからこそ、あえてお聞きしたいのです。
どれくらいの時間を、そこに本気で注ぐことができるでしょうか。

もし本気で目指すのであれば、1年間、学校や養成所でしっかりと時間を使うという選択も、ぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。