調律で終わらない調律師みきあつしのピアノ工房

お客様の声

兵庫県姫路市 K様/シゲルカワイ SK-2

私は2007年にシゲルカワイSK2を購入し、趣味でピアノを楽しんでいる姫路在住のものです。シゲルカワイとのなれそめは、カワイのショップまで出向いて試弾し、音色の良さにひかれて購入を決めたのですが、いろいろいきさつがあって、試弾品を比較して現物購入することはできませんでした。

我が家に送られてきたSK2は、低音域こそいい音色がするものの、中音域はあまり特徴のない中性的な音色でした。加えて、このピアノの鍵盤が重いのです。特に、低音側においてそれが顕著でした。

購入初期にカワイ調律師でMPAの I 氏に特に低音側を軽くしてほしいとお願いしましたが、抜本的な対策はしてもらえませんでした。最近、調律師を姫路のY楽器のE氏(MPS取得)に変えて、特に整調に重点を置いて調律をお願いしましたが、整調後も低音側の鍵盤のダウンウエイト(以下DW)はC16が65g、D18が67g、E20が68g、A1が65gという結果で改善は見られませんでした。Y楽器の社長に鉛を調整して鍵盤を軽くできないかと相談しましたが、リスクが大きすぎるということで受けてもらえませんでした。(この社長は新しいシゲルカワイに買い換えたらどうかと言ってくる始末でした。)

Youtubeで調べたところ、三木淳嗣氏が「知ってた?鍵盤を軽くする方法!!」をアップされており、これを拝見して実際に依頼者からの注文で成果を上げておられたことを知りました。そこで、我が家のSK2を魔改造してスタインウェイ並みのタッチの軽さ、レスポンスの良さに加えて、もっとブリリアントな中音域を奏でるピアノにしたいと考えるに至りました。

早速三木氏に連絡して自宅に来ていただき、我が家のSK2の現在の鍵盤・アクションの状態を確認して頂きました。その結果、鍵盤のバランス・フロントキーピンに錆・油脂等が付着していたことにより、鍵盤のDWは低音側ではほとんどが65g以上の値でした。試しに、その日にC28の鍵盤について錆等を除去する等の一連の整調を行った結果、DWは70gから58gへと大幅に減少することを確認しました。

そこで、まずは3日かけて整調(鍵盤・アクション調整)を全て行ない、全ての鍵盤とアクションの部品の位置と動きのタイミングを、同じ条件に揃える作業をしていただくことにしました。この作業はコンサートのフルコンでは毎年行われているメンテナンス作業だそうですが、我が家のSK2では一度もしていないのでやっていただくことにしました。その結果、DWは大多数の鍵盤で60g台後半の値から50g台半ばの数値に大幅に改善されました。

引き続き2日かけてウエイト調整をしていただきました。これは鍵盤とアクションを三木氏の工房に持ち帰っての作業でした。DWは48gにそろえていただくことができました。その時のアップウェイトの値は何れも30g以上の値を確保できており、仕上がりの軽さを体感することができました。

アクション納入後は整音作業として音色の調整をしていただきました。これまで担当の調律師からタブーとされてきた硬化剤をハンマーに塗ることにより、中音域の貧弱さはなくなり、中音域も高音域と連続してブリリアントな響きを奏でる素晴らしいピアノに激変しました。

三木氏が帰られてから早速ピアノを弾いてみました。いつもウォーミングアップを兼ねて最初にハノンを弾いているのですが、まさに「タッチも音色も激変」でした。特に、59番の6度の4重トリル、54番の3度の4重トリルや42番43番のアルペジオなどでは軽くてとても弾きやすくなっていました。ハノン以外の曲では、オクターブの和音のタッチが軽くなり、しかもその音色の輪郭が以前より圧倒的に際立っていました。また、中音部の音色が期待通りに鮮やかな響きに変わっていました。

音色やタッチ以外の際立った変化としては、ラウドペダルが変わりました。具体的には、以前のハーフペダルの感覚でペダルを踏むと、1/4ペダルぐらいしかペダルの効果が現れなくなってしまい、それよりも浅く踏むとほとんどペダル保持されない状態でした。三木氏にペダルについて尋ねたところ、「ペダルは触っていない」とのことでした。「ただ、ペダルの遊びの量は適正(許容範囲内)でしたので、動かしてはいませんが、ダンパー(弦の振動を止めるフェルト)がかかり始めるタイミングはバラバラでしたので、それを揃えています(ダンパー総上げ調整)。もしかすると違和感あったのはそれかもしれませんね。」とのことでした。

私はペダルについて最初は戸惑ったものの、1~2週間たった現在、徐々にこの状態に慣れてきました。そして、思わぬ効能として、ピアノの改造前までハーフペダルよりもペダルの効きが少ない状態でのコントロールがシビアだったのが、改造後はこの部分でのペダルの踏み込み量が少し増えたおかげで、ハーフペダル以下の状態のコントロール性がよくなり、表現の幅が増えたような気がします。それ故、ペダルは今のままの状態で続けていこうというように考えが変わりました。これも、ピアノ改造による調整結果の思わぬ副産物なのだなと思っております。

結論として、以前とは別なピアノに生まれ変わったがごとく、好みの音色と弾きやすいタッチのピアノにしていただいた三木氏には感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。